キャッシュレス決済の1種であるクレジットカードは、契約者数や利用限度額などが順調に増加しているという背景があります。
経済産業省の発表によると、2023年のキャッシュレス決済比率は前年よりも上昇し、39.3%(126.7兆円)となりました。
キャッシュレス決済の内訳は、クレジットカードが83.5%(105.7兆円)であり、多くの方が普段のショッピングでクレジットカードを利用し始めていることが分かります。
しかし、クレジットカードの国内シェアや発行会社について、気になるという人もいるでしょう。
ここでは、クレジットカード発行会社の特徴や役割、国内シェアの動向や今後のトレンドについて解説していきます。
クレジットカードの発行会社とは?
そもそもクレジットカードの発行会社とは、カードそのものを発行し管理する会社のことです。
三井住友カードであれば「三井住友カード株式会社」、楽天カードであれば「楽天カード株式会社」のように、それぞれのカードごとに発行会社が異なります。
また、発行会社は以下の3者と重要な関係性があるため、確認しておきましょう。
・カード利用者(契約者)
発行会社と契約し、カードの利用代金を支払う
・国際ブランド
ライセンス料を支払い、ブランドと提携する
・加盟店管理会社(acquirer)
利用者が決済したカード代金を加盟店へ支払う
クレジットカードの発行会社の役割・特徴
クレジットカード発行会社は、実際にクレジットカードを発行し、入会手続き・審査などの管理を行う役割があります。
そのほかにも、以下のような特徴が挙げられます。
・クレジットカードの利用金額に応じて、ポイントを付与する
・各種保険を提供する(旅行傷害保険など)
・会員限定の特典や優待サービスを提供する
クレジットカードの発行会社とカード利用者の関係性
クレジットカード発行会社と利用者は密接な関係があります。
まず、クレジットカードの申し込み時に発行会社が審査を行い、発行の可否を決めます。
また、発行されたカードでショッピングやキャッシングを行なった場合、支払日までにカード利用代金が請求される仕組みです。
発行会社は利用代金を立て替え、カード利用者は請求された代金を期日までに支払わなければなりません。
クレジットカードの発行会社と国際ブランドの関係性
そもそも国際ブランドとは、各国や各地域で利用できるクレジットカードのブランドのことで、代表的なものとして以下が挙げられます。
・Visa
・Mastercard
・JCB
・American Express
・Diners Club
クレジットカード決済に対応している店舗で全てのカードが使えるわけではなく、加盟している国際ブランドのみ支払いが可能です。
クレジットカード発行会社は、ライセンスを取得した国際ブランドのカードを発行できます。
代わりに、ライセンス使用料を国際ブランドに支払う必要があります。
クレジットカードの発行会社と加盟店管理会社の関係性
加盟店管理会社(acquirer)とは、発行会社と加盟店を仲介する役割となる会社です。
加盟店の新規契約や審査手続き、発行会社へ請求した利用代金を加盟店へ支払うなどの業務を行っています。
特に、利用代金の請求で発行会社と関わりがあり、以下の流れで支払いが精算されます。
1.クレジットカードを利用する
2.加盟店管理会社が発行会社へ利用代金を請求する
3.加盟店管理会社が加盟店へ利用代金を精算する
つまり、加盟店管理会社は、クレジットカード決済を導入する店舗と契約する役割を担っています。
クレジットカードの発行会社は主に8種類に分けられる
クレジットカード会社の発行会社は主に以下の8種類に分類され、それぞれ特徴が異なります。
・銀行系
・流通系
・ネット系
・交通系
・信販系
・消費者金融系
・ガソリン系
・携帯キャリア系
発行会社が異なることで、提供するサービスの内容が特徴が異なります。
そのため、クレジットカードの発行を検討する場合は、発行会社の種類にも注目すると良いでしょう。
①銀行系の特徴
主に、銀行が発行するクレジットカードです。
メガバンク(三菱UFJ銀行や三井住友銀行など)や地方銀行、信用金庫などの金融機関が発行しており、以下の特徴が挙げられます。
・信頼性の高いカード
・セキュリティ面が充実している
・銀行口座と連携したサービスが受けられる
銀行系クレジットカードは発行会社が銀行であるため、信頼性が高いことが特徴です。
セキュリティ面やステータスが充実しているカードも多く存在します。
また、銀行口座と連携することでATM手数料が無料になる特典など、銀行ならではの優待サービスが提供されています。
②流通系の特徴
「流通系」とは、スーパーやデパート、百貨店をはじめとする小売業者によって発行されるクレジットカードです。
イオンカードやセブンカードなどが代表的な流通系クレジットカードです。
自社や系列店舗で利用できる特典が豊富で、以下の特徴が挙げられます。
・自社や系列店舗で割引サービスがある
・系列店舗でのポイント還元率がアップする
・年会費が安い/無料
・他のクレジットカードに比べて審査の傾向が異なり、利用者数が多い
流通系クレジットカードは、自社や系列店舗でカードを使ってショッピングしてもらうことを目的としています。
そのため、多くの方が発行できるような申込条件であることが一般的です。
また、店舗での割引や還元率アップなどの特典に特化しているため、買い物を頻繁にする方はサービスを活用できるでしょう。
③ネット系の特徴
ECサイト(Amazon・楽天など)やインターネットサービス(PayPay)などを提供する会社が発行するクレジットカードです。
Amazonや楽天などのネットショッピングで活用でき、以下の特徴があります。
・対象のサービスを利用するとポイント還元率がアップする
・ECサイトの送料が安くなるなどの特典が付帯されている
・基本ポイント還元率が高い
自社のサービスで活用できる特典が豊富なため、そのサービスを頻繁に利用している方向きといえます。
④交通系の特徴
JRなどの鉄道会社やANA、JALなどの航空会社などが発行している交通系クレジットカードです。
対象の交通機関で活用できる優待サービスが豊富で、以下の特徴があります。
・ICカード乗車券のオートチャージ機能を利用可能
・航空会社の場合はマイルが貯まりやすい
・国内・海外の旅行傷害保険が付帯されている
鉄道会社のクレジットカードの場合は、ICカード乗車券をはじめとしたサービスが豊富で、通勤や通学の際に活用できます。
航空会社であれば、マイルが貯まりやすい特典が用意されているため、出張や旅行の機会が多い場合に利便性が高いでしょう。
⑤信販系の特徴
信販系とは、商品やサービスの立て替え払い(販売信用)を行っている「信販会社」が発行会社のクレジットカードです。
オリコやクレディセゾン、セディナなどが信販会社の例であり、以下の特徴があります。
・運営の歴史があり安定したサービスやサポートを受けられる
・ステータスや特典・付帯サービスが豊富
・カードの種類が豊富
信販会社はクレジットカードのノウハウを有しており、さまざまな特徴のカードを発行しています。
そのため、ライフスタイルやニーズに合わせたカードを選べることが特徴です。
⑥消費者金融系
消費者金融系は、個人向けローンを提供する「消費者金融会社」が発行するクレジットカードです。
アコムやアイフルなどのカードローンを提供する会社が発行しており、以下の特徴が挙げられます。
・カードローン機能が付帯されている
・リボ払い専用であることが一般的
消費者金融は融資を行う会社であるため、クレジットカードのキャッシング機能(現金を借入できる機能)に特化しています。
そのため、カードローンとショッピングの両方を使いたい場合に活用できる発行会社です。
⑦ガソリン系
ガソリン系はガソリンスタンドを運営する会社が発行するクレジットカードです。
apollostationやENEOSが該当し、以下の特徴が挙げられます。
・ガソリン代の値引きサービスが受けられる
・車に関する付帯サービスやETCカードなどの特典も付帯されている
ガソリンに関する特典がメインですが、車関連の優待サービスが豊富なため、ドライブの機会が多い方や法人カードとして活用できるでしょう。
⑧携帯キャリア系
docomoやau、softbankなどの携帯キャリア会社とそのグループ会社が発行するクレジットカードです。
スマホ代や回線料金などのサービスが特徴で、以下のサービスが挙げられます。
・携帯料金の支払いで高還元
・スマホ保険などのサービスが提供されている
・系列サービスを利用するとポイント還元率がアップする
基本的には、その携帯キャリア会社を利用している方向けの特典が豊富です。
そのため、契約しているキャリア会社発行のクレジットカードを利用するのが一般的といえます。
クレジットカード業界の国内シェアとは?
キャッシュレス決済が広まりつつあることで、国内でのクレジットカードのシェアは、年々増加しています。
しかし、どのくらい発行されているのか、年間でどのくらい決済されているかなどの市場規模が気になる方もいるでしょう。
ここでは、クレジットカードの信用供与額や発行枚数などのデータも確認しながら、国内のシェア状況について説明します。
クレジットカードの信用供与額の傾向
信用供与額とは、発行会社が利用者に提供した利用限度額の合計です。
一般社団法人 日本クレジット協会が提供する統計によると、過去5年間の信用供与額は以下のように推移していました。
2019年 | 73兆4,311億円 |
2020年 | 74兆4,576億円 |
2021年 | 81兆173億円 |
2022年 | 93兆7,926億円 |
2023年 | 105兆7,272億円 |
新型コロナウイルスが流行した2020年は前年と横ばいですが、それ以外の年では前年より10%程度伸びていることが分かります。
つまり、過去5年間で多くの方がクレジットカードを利用していることがわかります。
また、同調査によると、信用供与残高については、以下の推移でした。
2019年 | 13兆5,801億円 |
2020年 | 13兆6,543億円 |
2021年 | 14兆5,921億円 |
2022年 | 16兆936億円 |
2023年 | 17兆9,256億円 |
信用供与残高とはクレジットカードの決済残高の合計のことで、上記の表からクレジットカードによる支払いが増えていることが分かるでしょう。
クレジットカードの契約枚数の傾向
一般社団法人 日本クレジット協会が提供する統計によると、クレジットカードの契約枚数も、年々増加している傾向にあります。
2019年 | 2億6,326万件 |
2020年 | 2億6,577万件 |
2021年 | 2億7,112万件 |
2022年 | 2億7,973万件 |
2023年 | 2億8,764万件 |
各年で、前年より2〜3%程度増えていることがわかりました。
このことから、クレジットカードの国内シェアは年々増加しており、今後の需要も大きいことが分かるでしょう。
また、新規で契約している人はもちろん、クレジットカードの複数持ちも増えていることがシェア増加の理由として考えられます。
クレジットカード業界の国内シェアが増加傾向の理由
クレジットカード業界の国内シェアが増加傾向の理由としては、キャッシュレス決済を利用する人が増えていることにあります。
経済産業省の発表によると、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%(126.7兆円)となり、前年と比べて増加しています。
つまり、多くの人が店舗やネットショッピングの決済としてクレジットカードを利用するようになったことで、国内シェアの増加に繋がったと考えられるでしょう。
クレジットカード業界の国内シェアを海外と比較するとどう?
クレジットカード業界の国内シェアは、海外と比較すると高いとはいえません。
経済産業省の発表によると、中国や韓国では2020年時点でキャッシュレス決済の普及率が80%を超えており、多くの人がクレジットカードを利用していることが分かります。
また、主要な先進国では2020年時点で40%~60%台の普及率であり、日本はキャッシュレス決済において遅れをとっている状況です。
政府の目標として、2025年にキャッシュレス決済比率を40%に上げることを目標としていますが、依然として海外に比べるとクレジットカードが一般的ではないことが分かるでしょう。
クレジットカード業界の今後の動向やトレンド
クレジットカードの今後のトレンドについては、以下の3点が予想されます。
・キャッシュレス決済の需要は伸びる
・非接触決済が普及されていく
・不正利用が増えていることから、セキュリティが重視される
国内ではキャッシュレス決済の普及率が高いとはいえず、まだまだクレジットカードの需要は増えることが予想されます。
近年では、完全キャッシュレスの店舗や施設が増えてきたことから、クレジットカードの利用者が増える可能性があるでしょう。
また、新型コロナウイルスが流行した2020年から、非接触決済が可能なクレジットカードが重宝されました。
新型コロナウイルスは落ち着いた今でも、決済時間の短縮や手軽さの面から、タッチ決済が可能なクレジットカードが増えるでしょう。
さらに、キャッシュレス決済の普及に伴い、クレジットカードの不正利用額が増加傾向にあります。
各カード会社がナンバーレスカードや不正利用の検知システムの導入など、さまざまな対策を講じていますが、今後はセキュリティに特化したカードの需要が高くなるでしょう。
クレジットカード発行会社の国内シェアランキング
ここからは、クレジットカード発行会社の国内シェアランキング上位6社について、紹介します。
1位.イオンフィナンシャルサービス株式会社
2位.株式会社クレディセゾン
3位.三菱UFJニコス株式会社
4位.株式会社JCB
5位.三井住友カード株式会社
6位.株式会社オリエントコーポレーション
それぞれの会社の特徴について解説します。
1位.イオンフィナンシャルサービス株式会社
イオンフィナンシャルサービス株式会社は、イオングループの中でも総合金融事業を営む会社です。
クレジットカードの発行だけでなく、各種ローンや投資・保険など、さまざまなサービスを提供しています。
全国のイオンの店舗で割引やポイント進呈などの優待サービスがあり、イオンでショッピングをする方向けのクレジットカードを発行していることが特徴です。
2位.株式会社クレディセゾン
株式会社クレディセゾンは信販会社で、セゾンカードをはじめとした数十種類のクレジットカードを発行しています。
元々は西武百貨店と提携し、「西武カード」を発行していましたが、1983年にセゾンカードに名称が変更されました。
4種類の国際ブランドと加盟しており、目的に応じたクレジットカードを発行できることが特徴です。
また、独自のサービスとして、有効期限なく利用可能な「永久不滅ポイント」を提供しています。
3位.三菱UFJニコス株式会社
三菱UFJニコス株式会社は、三菱UFJフィナンシャル・グループのクレジットカード発行会社です。
グループの代表的な企業として、「三菱UFJ銀行」があり、信頼性や安全性の高さが特徴です。
また、4種類の国際ブランドと加盟しており、さまざまなシーンで役立つカードを発行できます。
代表的なクレジットカードとして、ポイントが自動でキャッシュバックされる年会費無料の「三菱UFJカード VIASOカード」を提供しています。
年会費 | 永年無料 |
申込条件 | 18歳以上 本人に安定した継続的な収入のある方 または学生の方(高校生を除く) |
ポイント 還元率 | 0.5% (自動キャッシュバック) |
利用限度額 | 最高100万円 |
発行 スピード | 最短1営業日 |
国際 ブランド | Mastercard |
支払方法 | 1回払い 2回払い ボーナス一括払い リボ払い 分割払い |
締日/支払日 | 毎月5日締め/当月27日支払い |
4位.株式会社JCB
株式会社JCBは、日本唯一の国際カードブランドである「JCB」が運営するクレジットカード発行会社です。
「JCBオリジナルシリーズ」という独自の優待サービスによって、提携店舗で多くのポイントがもらえます。
また、JCB独自で提供されている「スキップ払い」では、カード支払日を最長6ヵ月先まで調整できる点が特徴です。
代表的なクレジットカードとして、18歳以上39歳以下を対象とする年会費無料の「JCB CARD W」が提供されています。
年会費 | 永年無料 |
申込条件 | 18歳以上39歳以下で、本人または配偶者に安定継続収入のある方。 高校生を除く18歳以上39歳以下で学生の方。 ※一部対象外の学校あり |
ポイント 還元率 | 1%~10.5% (Oki Dokiポイントへ還元) |
利用限度額 | 最大100万円 |
発行 スピード | 最短5分 ※ナンバーレスの場合 |
国際 ブランド | JCB |
支払方法 | 1回払い 2回払い ボーナス一括払い リボ払い 分割払い |
締日/支払日 | 毎月15日締め/翌月10日支払い |
5位.三井住友カード株式会社
三井住友カード株式会社は、三井住友フィナンシャルグループ傘下のクレジットカード発行会社です。
クレジットカードの発行だけでなく、信販事業や各種ローンの提供、銀行への保証業務など、様々な事業を手がけています。
国際ブランドはVisa、Mastercardの2社と提携しており、世界中で幅広く利用可能です。
また、ショッピングで貯まる「Vポイント」は2024年4月にTポイントと提携しており、幅広い店舗で利用できるようになりました。青と黄色のVポイントは、ID連携がオススメです。
VpassおよびVポイントPayアプリからID連携することで、Vポイント(旧名称:Tポイント)を合算でき、他社ポイントへの移行など「使う」のサービスが広がります。
※2024年3月31日(日)をもって、「他社ポイント・マイレージへの移行」は一部銘柄への移行が終了しました。
代表的なクレジットカードとして、ナンバーレスカードでセキュリティ性の高い「三井住友カード(NL)」が提供されています。
年会費 | 永年無料 |
申込条件 | 満18歳以上の方(高校生は除く) |
ポイント 還元率 | 0.5%~7% (Vポイントへ還元) ※ポイント還元率は利用金額に対する獲得ポイントを示したもので、ポイントの交換方法によっては、1ポイント1円相当にならない場合があります。 |
利用限度額 | 最大100万円 |
発行 スピード | 最短10秒 ※即時発行できない場合があります。 |
国際 ブランド | Visa Mastercard |
支払方法 | 1回払い 2回払い ボーナス一括払い リボ払い 分割払い |
締日/支払日 | 15日締め翌月10日払い 月末締め翌月26日払い |
6位.株式会社オリエントコーポレーション
株式会社オリエントコーポレーションはローンやショッピングクレジットを提供する信販会社です。
「オリコカード」をはじめとして、22種類のカードを提供しています。
みずほ銀行系列の信販会社で、みずほマイレージクラブの特典が利用できるなどの優待サービスが提供されていることが特徴です。
また、ポイントサービスは「暮らスマイル」と「オリコポイント」の2つのサービスが提供されており、カードによって貯まるポイントが異なります。
まとめ
クレジットカードの発行会社は、カードを発行管理し、利用者に代金を請求するなどの役割を担っています。
また、国際ブランドと提携したり、加盟店管理会社へ利用代金を支払うなど、さまざまな会社と密接に関わっています。
会社によっては「銀行系」「流通系」など、いくつかの分類に分けられ、それぞれ提供するサービスが異なっているのです。
また、日本ではキャッシュレス決済の普及率が40%弱にとどまっていますが、世界的には低い水準であり、今後さらに普及されていくと考えられます。
今後はタッチ決済に対応しているカードやセキュリティ対策が豊富なカードなどの需要が高くなることがトレンドとして考えられます。
そのため、新たにクレジットカードの発行を検討している方は、上記のポイントも比較しておきましょう。