2010年以前にカードローンやキャッシングを利用していた方の中には、過払い金が発生している可能性があります。
多くの弁護士事務所でも過払い金の相談を取り扱っていることから、自分も対象なのか気になる方もいるでしょう。
過払い金請求では、法律で定める上限金利を超えて支払った分の返済金額が返還されるため、たくさん借りていた人や長期間借入していた方は、多くの金額が戻ってくる可能性があります。
ただし、過払い金請求にはいくつかリスクもあるため、注意点などを理解してから手続きを行うことが重要でしょう。
カードローンに過払い金は発生する?
カードローンの過払い金は、10年以上前に利用していた方であれば発生する可能性があります。
また、過払い金は全てのカードローンで発生していたわけでなく、一定の条件を満たす場合のみに発生しているため注意が必要です。
カードローンの過払い金があるかを確認するために、まずは過払い金の仕組みや条件について説明していきます。
過払い金とは?
過払い金とは「利息制限法で定められた上限金利で計算される金利額を超えて返済したお金」のことです。
つまり利息制限法を超えた利息分や、その利息を支払ったことで追加で発生した返済額が過払金に該当します。
みなし弁済とは?
みなし弁済とは貸金業の規制等に関する法律に定められた条項で「利息制限法を超えた金利で貸付を行なっていても、条件を満たせば認められる」という取り決めです。
具体的な条件としては以下が該当していました。
・貸金業登録の認可を受けた貸金業者であること
・貸付時に契約書(17条書面)を交付すること
・弁済(返済)時に受領証書(18条書面)の交付をすること
・借主が任意に利息を支払ったこと(無理矢理支払わされていないこと)
・借主が利息を認識して支払いをしていること
みなし弁済はもちろん利息制限法を超えた貸付になるため、払い過ぎた利息は過払金に該当します。
グレーゾーン金利とは?
グレーゾーン金利とは、利息制限法と改正前(2010年以前)の出資法で定める上限金利が異なることで発生していた金利のことです。
適用される法律 | 上限金利 |
---|---|
出資法 | 29.2% |
利息制限法 | 10万円未満:20.0% 10万円〜100万円未満:18.0% 100万円以上:15.0% ※借入残高で上限金利が異なる |
上記の表からもわかる通り、利息制限法の15%〜20%を超える金利で出資法の上限内に収まっていた金利をグレーゾーン金利といいます。
最高裁判所の判例によると平成18年(2006年)1月13日に最高裁判所第2小法廷での判決により、グレーゾーン金利分の利息支払が無効であるとの判断が下されました。
つまり、グレーゾーン金利は過払い金であることが認められたのです。
過払い金が発生する理由やその条件
過払金はグレーゾーン金利やみなし弁済によって、利息制限法で定める金利以上の利息が支払われたことが要因で発生します。
・平成20年(2008年)頃より前の消費者金融からの借入、クレジットカードのキャッシングであること
・時効(最終借入・最終返済から10年)を過ぎていないこと
・請求先の貸金業者が倒産していないこと
上限金利に関する法律が整備されたのは平成22年(2010年)ですが、法律改正に先立って多くの消費者金融会社が利息の見直しを行いました。
現在のカードローンは過払い金が発生しない
現在のカードローンでは、利息制限法や出資法、貸金業法が整備されているため、上限金利を超えた貸付は行いません。
そのため、みなし弁済やグレーゾーン金利もなく、過払い金は発生しません。
他にも、クレジットカードのショッピング利用分についても過払い金はないため注意が必要です。
過払い金がある場合はどうすればいい?
過去にカードローン等を利用していて、過払い金が発生する見込みがある場合は、以下の手順で手続きを行いましょう。
・過払い金の金額を確認する
・過払い金請求手続きを行う
上記の手続きは自分で行うことも可能ですが、手続きが複雑になるため、弁護士等の専門家に相談するケースもあります。
自分で手続きした場合でも専門家に依頼した場合でもそれぞれメリット・デメリットがあるため、手続き方法について理解しておくことが重要です。
過払い金があるかどうか確認する方法
過払い金の確認方法は、主に以下の3つが挙げられます。
・過払い金シミュレーションを使ってみる
・自分で計算する
・弁護士などの専門家に調査してもらう
基本的には、自分で過払い金を算出するか専門家に依頼するかの2択となります。
それぞれの方法でメリットやデメリットがあるため、自分が利用しやすい方法を選択しましょう。
過払い金シミュレーションを使ってみる
インターネット上では、過払い金のシミュレーションを提供しているサイトがいくつかあります。
シミュレーションでは、過去の借入金額や月々の返済額を入力するだけで過払い金がいくらあるか自動で計算してくれるため便利です。
しかし、シミュレーションの結果は、正確なものではなく概算となる点に注意が必要です。
そのため、あくまで過払い金がどのくらい見込めるのかを判断するための指標となることを理解しましょう。
自分で計算する
貸金業者から取引履歴を取り寄せて、自分で利息を計算するのも1つの方法です。
過払い金の計算方法としては、以下の手順で行います。
1.過去の借入について利息制限法の上限(15%〜20%)で計算し、総支払額を算出する
2.貸金業者から取り寄せた取引履歴から総支払額を算出する
3.2つの総支払額の差額が過払金に該当する
ただし、上記の手順で計算した場合でも正確な金額を算出できないケースがあります。
そのため、より正確な金額を知りたい場合は専門家に依頼するのが無難でしょう。
弁護士などの専門家に調査してもらう
自分で過払い金を計算するのが困難な場合、専門家に依頼するのも1つの選択肢です。
例えば、以下の機関で過払い金の相談に対応しています。
・各自治体の法律相談窓口
・消費生活センター
・法テラス
・弁護士事務所
・司法書士事務所
専門家に依頼する場合、取引履歴の取り寄せから金額の計算までを全て任せられます。
自分で計算する手間がかからないというメリットはある一方で、相談には費用がかかる点に注意が必要です。
そのため、初回無料相談に対応している専門家を利用することや、事前にシミュレーションなどを使い、充分な過払い金が見込める場合に相談するなどの対応が必要でしょう。
過払い金の請求方法
過払い金の請求方法としては、以下の2点が挙げられます。
・貸金業者と過払い金の交渉をする
・過払い金請求の裁判を行う
上記の方法は専門家に依頼するのが一般的ではありますが、専門家に手続きを一任できます。
それぞれの手続き方法を理解し、自分に合った方法で請求することが重要でしょう。
貸金業者と過払い金の交渉をする
基本的な過払い金請求の方法として挙げられるのが、貸金業者へ交渉することです。
貸金業者から連絡が来たら、具体的な支払金額や支払方法、支払期限などのやり取りを行いましょう。
また、書類の作成や交渉手続きについては専門家に一任できるため、自分で貸金業者とやり取りするのが不安という方は検討してみましょう。
過払い金請求の裁判を行う
貸金業者が交渉に応じない場合や交渉内容に納得がいかない場合は、裁判で請求するのも選択肢の1つです。
また、裁判手続きは時間とコストがかかりますが、交渉した場合と比べて戻ってくるお金が増える可能性が高まります。
裁判手続きに必要な書類については、以下の通りです。
・訴状
・証拠品(取引明細書、引き直し計算書など)
・請求先貸金業者の代表者事項証明書
過払金請求の訴訟は民事裁判となるため、両者が和解するか、判決が出ることで解決します。
そのため、判決前に過払い金の支払いに応じるケースも多いです。
また、裁判手続きは自分で行えますが、弁護士に依頼することで手続きの手間を減らせるため、検討しておきましょう。
過払い金を請求する際に注意すること
過払い金請求を行う際に注意するポイントとしては、以下の4点が挙げられます。
・時効が迫っていないか
・業者が倒産していると請求できない場合がある
・過払い金請求は時間を要する
・信用情報に影響がでる場合がある
過払い金の請求ができなくなる可能性やその後の借入ができなくなるケースもあるため、上記の注意点を理解してから手続きを行いましょう。
時効が迫っていないか
過払い金には時効があり、最終借入日または最終返済日から10年までが請求期限です。
最終借入日または最終返済日は取引履歴から確認できるため、まずは時効がいつになるかを確認しましょう。
出資法が改正されたタイミングが2010年であるため、過払い金がある方の多くは時効が近いと考えられます。
時効を過ぎた場合は請求できなくなるため、過払い金の可能性がある方はすぐに準備に取り掛かる必要があるでしょう。
業者が倒産していると請求できない場合がある
過払い金請求は以前借入していた貸金業者へ行うため、倒産していると請求できません。
これは、倒産していると、支払う相手がいないからです。
過払い金請求を行う人が増えると、貸金業者の経営状況は悪くなるため、現在営業している業者が突然倒産することもあります。
また、倒産していなくも経営状況が芳しくない貸金業者の場合、支払金額が減少するケースもあるため注意が必要です。
過払い金請求は時間を要する
過払い金請求は手続きの準備や書類のやり取り、交渉の期間などがあるため、時間を要します。
なるべく早く手続きしたい場合は専門家に一任するのも1つの選択肢です。
また、請求を後回しにせず、すぐに手続きや準備に取り掛かるのも重要となります。
信用情報に影響がでる場合がある
過払い金請求は信用情報の「異動情報」として登録されます。
信用情報に異動情報が記録されていると、他の借入やクレジットカードなどの審査に通りません。
これは、過去に重大な返済トラブルが発生したことを意味するからです。
過払い金の異動情報は5年間残り続けるため、今後借入を検討している方は注意しましょう。
カードローンが過払い金発生なしで利用できる理由
現在のカードローンは、過払い金が発生せずに利用できるようになりました。
したがって、上限金利を超えた利息を支払うことはありません。
この背景には、カードローンが貸金業法で厳格に規制されていおり、消費者が守られる法改正があったからです。
ただし、貸金業登録をの受けずに融資を行う闇金業者は利息制限法に違反しているケースもあるため注意しましょう。
貸金業法で守られている
貸金業法とは、消費者金融をはじめとする貸金業者や、その借入について定められた法律です。
多重債務者問題を解決するために2006年から法律を改正し、貸金業法が制定されました。
貸金業法を改正したことで多重債務問題を防ぐだけでなく、利息を払い過ぎていた問題についても対処できるように仕組みとなっています。
貸金業法の主な内容
カードローンが安心して利用できる理由となっている貸金業法の制度概要について、改正前と改正後を比較してみましょう。
内容 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
総量規制 | 対象外 | 対象 |
上限金利 | 29.2% (グレーゾーン金利が適用) | 15%〜20% |
業者の規制 | 登録者の氏名のみが必要 | 国家資格保有者を 営業所に置くことを義務化 登録者の氏名だけでなく、 登録番号も申請の際に必要に |
過剰貸付の禁止 | 過剰な貸付の禁止 信用情報、返済能力の調査 | 具体的な調査項目の明示 (収入・返済能力・信用情報など) 一定の条件下で収入証明書の提出を義務化 |
上記のうち、カードローンの利用者にとって重要なのが、総量規制と上限金利についてです。
また、上限金利については利息制限法を超えたグレーゾーン金利での融資ができなくなったことで、必要以上の利息が発生しないようになっています。
したがって、改正された貸金業法によって多重債務問題や過払い金がなく安心して利用できる仕組みが作られたのです。
過払い金発生なしでカードローンを安心して利用しよう!
2010年以前にカードローンを利用していた人であれば、過払い金が発生している可能性があります。
ただし、最終借入(または最終返済)日から10年後が時効となっているため、早めに手続きを行う必要があるでしょう。
また、現在のカードローンでは、貸金業法が整備されたことで、過払金なく安心して利用できる仕組みが作られました。
今後借入を検討している方は、カードローンも選択肢の1つとして検討してみましょう。
当メディアでは、他にもカードローンに関する記事をいくつか掲載していますので、興味のある方は以下の記事もあわせてお読みください。